認知症になる前に…家族で財産を守る「家族信託」の仕組みとは?

はじめに:もしも明日、判断能力がなくなってしまったら…
「もし、自分が認知症になってしまったら、長年かけて築いてきた大切な財産はどうなってしまうのだろう…?」
「親が認知症になった時、介護費用を親の預金から下ろせなくなったらどうしよう…?」
平均寿命が延び、誰もが健やかで豊かな老後を願う現代。しかしその一方で、認知症などによって判断能力が低下してしまうリスクは、誰にでも起こりうることです。
そして、あまり知られていない、しかし非常に深刻な問題があります。
それは、認知症などで判断能力が不十分だと判断されると、たとえご本人であっても、銀行口座から預金を引き出したり、不動産を売却したりすることが一切できなくなる『資産凍結』という事態です。
ご家族であっても、凍結された資産を動かすことはできません。
この「資産凍結」という、ご本人にとってもご家族にとっても非常につらい状況を、ご自身が元気なうちに、ご自身の意思で、そしてご家族の力で未然に防ぐ。
そのための画期的な仕組みが『家族信託』なのです。
1. そもそも「家族信託」とは?3人の登場人物で理解しよう
家族信託とは、ご自身が元気で判断能力があるうちに、「信頼できるご家族」に対し、ご自身の財産の管理や処分を任せるための法的な『契約』です。
この仕組みは、3人の登場人物で成り立っています。

- 委託者(いたくしゃ):財産の所有者で、管理をお願いする人。(例:お父様)
- 受託者(じゅたくしゃ):財産を託され、管理・運用・処分を行う人。(例:信頼できる長男)
- 受益者(じゅえきしゃ):託された財産から生じる利益(生活費や介護費用など)を受け取る人。(例:お父様ご自身)
つまり、「お父様(委託者)が、将来の判断能力の低下に備え、長男(受託者)に財産の管理をお願いし、その財産から生まれる利益は、これまで通りお父様(受益者)ご自身が受け取る」という契約を結ぶのです。
2. 家族信託で、具体的にどんな「困った!」を防げるの?
ケース①:介護費用が親の口座から下ろせない!
【よくあるお悩み】
お父様が認知症になり、介護施設への入所費用が必要に。しかし、お父様名義の銀行口座は凍結され、数百万円の預金があるのに、ご家族は引き出すことができない…。
【家族信託なら!】
事前にお父様の預金を信託財産として長男が管理する契約を結んでおけば、長男は信託専用の口座から、いつでもお父様の介護費用を支払うことができます。
ケース②:空き家になった実家を売却して、介護費用に充てたい!
【よくあるお悩み】
お母様が施設に入所し、実家が空き家に。売却してその費用をお母様の介護費に充てたいが、お母様は既に判断能力が低下しており、不動産の売買契約を結ぶことができない…。
【家族信託なら!】
事前に実家を信託財産としておけば、長女(受託者)が、お母様に代わって実家の売却手続きを進め、その売却代金をお母様(受益者)の介護費用に充てる、といった柔軟な対応が可能になります。
3. よく似た制度「成年後見制度」との決定的な違い
認知症対策として、従来から「成年後見制度」というものがあります。しかし、家族信託とは決定的な違いがあります。
| 比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 | 
| タイミング | 判断能力があるうちに、将来に備える | 判断能力が低下した後に、申し立てる | 
| 財産管理者 | 自分で選んだ信頼できる家族 | 家庭裁判所が選任(専門家がなることも多い) | 
| 財産管理の柔軟性 | 柔軟(契約内容の範囲で積極的な活用も可) | 厳格(財産を守ることが最優先で、制約が多い) | 
| コスト | 契約時の専門家報酬 | 後見人へ継続的な報酬が発生する場合がある | 
一番の違いは、家族信託が「元気なうちに行う、積極的で柔軟な財産管理」であるのに対し、成年後見制度は「判断能力が低下した後の、守りを重視した財産保護」である点です。
まとめ:元気な今だからこそできる、家族への最高の思いやり
家族信託は、万が一ご自身の判断能力が低下してしまった時に、ご自身の財産が凍結されるのを防ぎ、ご家族に余計な負担をかけることなく、ご自身の望む形でお金を使ってもらうための、「未来への設計図」です。
それは、ご自身を守るためだけではなく、残されるご家族を想う、最高の思いやりと言えるのではないでしょうか。
しかし、ご家族の未来を左右する重要な契約だからこそ、専門家を交え、ご家族全員が納得する形で、オーダーメイドの設計をすることが不可欠です。どの財産を、誰に、どのような目的で託すのか。その契約内容一つで、未来は大きく変わります。
私たち「つなぐ山形相続センター」は、家族信託に精通した専門家として、皆様の想いやご家族の状況を丁寧にお伺いし、皆様にとって最適で、安心な家族信託の設計を、親身にお手伝いいたします。
あなたの、そしてご家族の「安心な未来」を守るために。
元気な今だからこそ、できることがあります。どうぞお気軽に、私たちの無料相談をご利用ください。




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